お化けの踊り

　　　　　　絵　　 水木しげる
　　　　　　作曲　中塚　哲


　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　いつの間にか見知らぬ村を一人で歩いていた。
　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　昔、生きている時に誰かと歩いた路に似ていた。

　　　　　
　　　　　　　　　　村のはずれでは黒坊主連が踊っていた。
　　　　　　　　　　　　　三拍子の旋律で、謡いながら踊っていた。　
　　　　　　　　　　　　　見知らぬサムライも二人藁積家に隠れて見ていた。　　　
　　
　　　　黒坊主連は黙りこくってひたすら踊っていた。

　　　　　　　　　　どこからかすすき野原に按摩爺が出てきて踊りを見ていた。
　　　　　　　　　　手をかざし手のひらの「眼」でじっとだまって見ていた。
　　　　　







　　　　　　　　　　　　地蔵小路では子泣き爺と砂かけ婆が石ころわらし音頭を楽しんでいた。
　　　　　　　　　　　　リズムはお化けの踊りと同期していた。
　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　子泣き爺はどこかであった気がしたので聞いてみた。
　　　　　　　　　　　　髭の塩爺と遠縁であることが分かった。






　　　　　　　　　　　村では土手のカボチャ爺が一人起きてお化けの踊りに合わせて
　　　　　　　　　　　鼻歌を歌っていた。　　　　　　　　　　　
　　　　　　　



　

　　　　　　　
　
　　　　　　黒坊主連は黙りこくって踊りながら地獄村を通り過ぎた。
　　　　地獄村の連中は働きながら黒坊主連に手を振っていた。






　
　　　
　　　　　地獄村のはずれでオットット爺が立ち止まり、懐かしそうに黒坊主連を見て
　　　　　ビックリしていた。
　　　　　黒坊主連は地獄村をすぎてもひたすら踊って、遠くの里山の小路に消えていった。
　　　　　3拍子のお化け音頭も次第に幽かになり、消えていった。